【小説】魔法の小瓶 -2-


「けほっ、けほっ」

砂塵に咳込んだ少年は、
閉じた袖でゴシゴシを目をこすると
不安そうにあたりを見渡した。

そして、煙の向こう、頭上から
こちらをみつめる6つの瞳に
目と口を大きく開けて言葉を失う。

?「!?~~~!?」パクパク
フ「…おやおや。これは……」
エ「……怯えてますね」

覗き込む2人をかき分けるように、
モニカがピョンッと前に出た。

モ「こんにちは!あたし、モニカ!きみは?」
?「ふぁっ!;」

少年は一瞬 ビクッ と体をこわばらせたが、
自分と同じ目線までしゃがみこんだモニカの笑顔に安心したのか
ゆっくりと、表情を変えていき…

?「ふぇ… ふえぇえええ~~~~~;;」
モ「わわわわ~~~~;;;」

空を仰いで、大声で泣き出した。

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モニ「そうかそうか、トカゲのモロクくんかぁ~~☆」

少年の隣に座りこんだ少女は、
少し嬉しそうに、長い耳を動かした。

一方の少年は、フラからもらったリンゴジュースを
不思議そうに、でも美味しそうにすすっている。

話を聞くと、
砂漠を歩いている間に疲れてしまい
そこに堕ちていた小瓶に、
トカゲの姿で入り込み
休んでいたということだ。

モロ「そしたら、ピカピカひかって、出られなくなっちゃったの」

と、少年は続ける。

キュ、と、袖の中の小さな手がカップを握りしめるのを見て
モニカが、そっか~怖かったねぇ、と、モロクの髪を撫でた。

フ「…ふむ…」

口元に手を当てて考え込んでいたマッド・フラが、ふと思いついたように顔を上げる。

フ「砂漠の妖精たちのイタズラかもしれないね」
エ「あぁ…」

砂漠の妖精たちは、蜃気楼を見せたり砂山の位置を変えたりして 旅人を惑わせる。
エリカにも、何度か経験があるようだ。

エ「小さな子を一人で閉じ込めるなんて、悪戯にも程がありますね」

「いや、これはただの捕縛魔法ではないぞよ」
モ「うわぁっ!」

と、そこに、桃色の髪の少女が ポンッ と現れた。

突然のことによろけたモニカの背中を、エリカがサッと支える。

フ「やぁやぁ、姫。お散歩かい?」
「何やら楽しそうな声が聞こえたものでな。少し寄り道させてもらったぞい」

姫、と呼ばれた少女(年老いた話し方から、少女と呼ぶには抵抗がある気もするが)は
小瓶とモロクを交互に観察し
やれやれ、と苦笑いを浮かべた。

姫「そこの。手足に違和感はないかえ?」

えっ?と背筋を伸ばしたモロクが、
袖に入ったままの両手をバタバタと動かして答える。

モロ「なにかついてるよ!」

その言葉に、姫は
"決まりじゃな"とうなずいた。

姫「"魔人の契約"じゃ。小瓶をこすった者の願いを3つ叶えるまで、手足の枷がはずれぬ」

と。

姫「下級魔法じゃから、条件さえクリアすればすぐに消滅するじゃろう」

なんじゃ、思ったよりもつまらんのう。
姫と呼ばれた少女は、そう言って植木の花に触れると ふっ とその姿を消した。

はは、忙しいお嬢さんだ。と、フラが笑う。

移動魔法を見るのが初めてなのか、
モロクは目を輝かせて植木の周りをぐるぐると観察し始めた。

すっかりお姉さん替わりのモニカが、
落ち着かないモロクを後ろからそっと抱きかかえてフラに尋ねる。

(この時エリカが、モロクの頭の上にずっしりと乗った豊満な胸と 自分の胸を交互に見て首を振ったことには誰も気づいていなかった)

モ「で?で? モロクくん、どうすればいいの?」
エ「願いを3つ叶える…ですよね?」
フ「つまり、小瓶をこすった私たちが、モロクくんにお願いをすれば良いのかな」

モロ「?ぼく、がんばる!」

こうして始まったモロク救出作戦(?)は
簡単そうに見えて、この後多くの人々を巻き込んだ長期戦になるのだった。

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Magicle Town

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