【小説】魔法の小瓶 -4-



マルシェからフラの事務所までは、大通りを抜けてすぐだ。
人混みさえなければ、10分もかからず帰れるだろう。

フ「人が増えてきたね。」
モ「みんなお昼ごはん買いに来たのかな~~」

と、マルシェの先に、T/C(トランステック・カンパニー)の看板が見えた。

モ「モロクくん、もう少しだよ!フラさんからはぐれないようにね~!」
フ「…おや?モロクくんは、モニカくんと手を繋いでいるのでは…」
モ「……」
フ「……」
モフ「モロクくんん~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」



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モロ「……」

ガヤガヤと行き交う人混みの中、モロクは立ち尽くしていた。

先程お兄さんにもらったドングリのオモチャを落としてしまい
コロコロと転がった木の実を追いかけた先で ふと振り返ると
そこにはもう、フラやモニカの姿が見当たらなかったのだ。

モロ「……」おろ…

来たことのない場所で、見たこともない人々が行き交う。

モロ「お、ねぇ、ちゃ……」おろ…

人、といえるのかもわからない。
以前いた世界にいた「人間」とはどこか違ったり、
もはや2足歩行をしているだけで、
自分のような爬虫類らしき"人"も、
ふわふわと毛皮を揺らす"人"もいた。

モロ「ふぇ……」

泣こう、と思っているわけではないのに、視界が涙で歪んでしまう。

モロ「ふええええ…ッ」

その時だった。

「あら~~~ どうしたの~~?泣かない泣かない、大丈夫よ~~~」
モロ「!」

バサアッ!と風を切る音が響いたかと思うと、
すとん、と、目の前に一人の青年が降り立った。

膝に手をついてかがむと、もう片方の手でモロクの目の下を拭う。

「うん、泣いてないわね。強い子、えらいわ~」

その言葉を聞いたモロクが、ギリギリのところで(ほぼアウトだが)グッと涙をこらえた。

「はじめまして、あたしはレイ。ぼく、お名前おしえてくれる?」

ぼく、モロク、と名乗ると
モロクくんね~~ 可愛いお洋服ね~~~ と、頭を撫でられた。

レ「モロクくんは、ひとりできたのかしら?」
モロ「あっあのね、フラさんと、モニカおねえちゃんと来たの!」
レ「あら、そうだったのね。それで、ここで2人を待ってるの?」
モロ「ううん、ぼく、わからなくなっちゃったの…」

ははあん、思った通り迷子ね
と、レイは心の中でつぶやいた。

朝市、昼時、夕方のマルシェでは、迷子の保護など日常茶飯事のことだったのだ。
まさかそれが、知り合いの連れだとは思わなかったが。

レ「とりあえず、TCに行けば誰かいるわよね」

独り言のようにつぶやいて、モロクに手を伸ばす。

レ「モロクくん、お兄さんと帰りましょうか」
モロ「!うん!」
レ(この子、素直すぎて簡単に誘拐されそうね…)

あとでじっくりフラを叱ってやるわ。

心に芽生えた親心を抑え込みながら、
レイはモロクの手を引き、T/Cへと連れ帰ることにしたのだった。



続く

Magicle Town

創作企画 Magicle Town 魔法と奇跡の世界へようこそ さぁ、楽しい魔法交流ライフを始めましょう

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