【小説】魔法の小瓶 -6-


モ「わぁ!すごい綺麗~!」

モロクが次々と作り出していくガラス玉は、人が覗き込むたびに屈折する光を受けて  虹色に輝いていた。

モ「お兄ちゃんが喜ぶよ~ありがとう、モロクくん!」
モロ「えへへ//」

パリン。
聞き覚えのある、皿が割れるような音が響く。

それは、モロクの魔法が解け、自由になったことを告げる音だった。

モロ「あっ」
モ「あっ はずれたー?」
レ「良かったわね~モロクくん♪」
モロ「……ッ」

わーい。

…そう、飛び跳ねて喜ぶと思っていた少年は
服の裾を きゅ、と握りしめて 顔を伏せた。

フ「…どうしたんだい?」
モ「あれっ?どっか、痛かった~?;;」

心配して覗き込む一同に告げた言葉は、意外なものだった。

モロ「…と…とれてない…」
モ「へ?」

ごにょごにょ、と。

下を向いたまま視線を合わせず。

消え入りそうな声で。

モロ「魔法…とれてない…」
モ「ふえ!?」
レ「…!あらー」
モ「どどどどどうして!?どうしようフラさん!?」

目をまわしながら慌ててフラの胸倉を叩くモニカとは対照的に
フラとレイは、複雑な笑みを浮かべて視線を交わしている。

その時、別の方向から パリン! と、音が響いた。

モ「! これ…」

モロクが閉じ込められていた小瓶──今はガラス製になった美しい小瓶が、
綺麗に真っ二つに割れたのだった。

モ「あれっ…あんなに硬かったのに…」
姫「魔法の反動じゃな。」

羽根のある少女が、そっと欠片を集めながら言う。

姫「この小瓶にかけられていた魔法が、無効になったということじゃ…
  ……のう?モロクよ」

そう言って、モロクの袖に隠れた両手に 小瓶の欠片をそっと置いた。

姫「本当は、魔法は解けておるじゃろう?」
モロ「………」
モ「?? そうなの?」

モニカが きょとん と首をかしげる。

モロ「……ごめんなさい…」

モロクの声は、小さかった。

魔法に閉じ込められたとき、この先、真っ暗なこの小瓶の中で、ずっと独りなんだと思った。

外の世界へ呼び戻してくれた人たちは
みんな優しくて、話しかけてくれて、たくさんのことを教えてくれた。

ありがとうって、言ってくれた。

生まれて初めて、誰かの役に立った。

魔法が解けてしまったら、モロクは、また、独りだ。
せっかく暗闇から出られたのに、また、独りに戻るのだ。

レイが、モロクのフードの上から 優しく頭をなでる。

レ「大丈夫よ~モロクくん、ほら、顔あげて?」

そのままモロクの両肩に手を置いて視線を合わせたレイは
にっこりと笑った。

レ「もう私たち、お友達じゃない?」
モロ「!」

その言葉に、モロクの瞳が大きく見開く。

モ「そうそう、友達~!これからもさ、素材お願いしちゃおっかな♪」
モロ「え…」
フ「私も、仲間に入れてもらえるかい?」
モロ「ふぇ…!?//」

あわあわ、と、口元を揺らす。
その時、キッチンの方から甘酸っぱい香りが漂ってきた。

モ「あっ!この香りは~~~!?///」

モニカが、跳ねるようにキッチンヘと消えて行き
すぐに、また跳ねるように戻ってきた。

両手に、ほかほかと湯気のたつ皿を携えて。

その後ろから、エリカが顔をのぞかせる。

モ「わーーーい♪エリカちゃんのアップルパイだ~~!!」
エ「モニカさん、転ばないでくださいね」
姫「ほう!どれ、わしも味見を」
レ「素敵~~♪私もいただいていいのかしら?」
フ「キミは甘いものに目が無いからねぇ」

あら、目なら沢山あるわよ?w という言葉に大きく笑いながら
一同はテーブルに運ばれたアップルパイを囲むように集まった。

エ「モロクさんが買ってきてくれたリンゴで作りました。……ようこそ、マジクル・タウンへ。ささやかですが、歓迎会です。」
モロ「!」
モ「いらっしゃいませ、モロクくん!」
レ「うふふ、これからよろしくね」
モロ「ふぇ…ふぇ……うええええええ;;」
一同「あああああ~~~!;;」

事務所中にたちこめる、甘酸っぱい香ばしい香りの中
大泣きしている少年と、慌てる少女達と、クスクスと笑う大人達が揃う空間。

配達を終えて帰社したエドウィンが見つけたその風景は
なんともカオスなものであったに違いない。



── つづく ──

Magicle Town

創作企画 Magicle Town 魔法と奇跡の世界へようこそ さぁ、楽しい魔法交流ライフを始めましょう

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